ハンターへの道、岩手・釜石で20年ぶりの試験に挑戦…結果は?

 東日本大震災やその後の人口流出による猟師減などで被災地の野生生物の生態系に変化が出ている。高台の造成工事で切り開かれた山林から追われるように、更地となり住民がいなくなった中心市街地にシカなどが出没するようになっている。こうした状況を打破しようと20年ぶりに開催された岩手県釜石市での狩猟免許試験を、記者が体験してみた。  狩猟免許とは、各都道府県知事が発行するが、全国で有効となる。有効期間は取得した日から翌々年の9月14日まで3年前後となる。その後は3年ごとに適性試験を受けて更新される。  試験はあみ猟、わな猟、散弾銃やライフル銃といった火薬を使った銃を扱う第1種銃猟、空気銃を扱う第2種銃猟の4種類。第1種銃猟の免許があれば空気銃も扱えるため、3種類の免許を取得すれば、すべての猟が可能となる。試験料は1種類ごとに5200円。  試験を受けるには、実施日の2週間前までに、申請所と一緒に、顔写真や医師の診断書を県広域振興局保健福祉環境部か保健福祉環境センターに提出する。  試験の約1カ月前、神経内科のある病院に診断書作成の予約を入れた。与えられたキーワードで短い文をいくつも作る30分間程度のテストが行われ、数日後に医師の問診を受け、ようやく診断書ができあがった。検査と診断書の作成費用は約1万2千円だった。ほかの受験者の中には、当日の問診だけで診断書ができたケースもあり、そちらは約4000円程度だったという。銃の事故などを防ぐために精神的な疾患がないかチェックするのが診断書であるにも関わらず、作成方法や費用にこれほどの差があることに違和感を抱いた。  試験日の2週間前、県猟友会主催の講習会が開かれた。テキストを使って、法令や動物の生態といった座学から網やわなの仕掛け方、銃の操作など実習まで、講習会は午前9時から午後5時までみっちり続いた。猟友会によると、講習会には78人が参加した。講習会ではテキストのほかに、問題集も配布された。問題集は、各ジャンルごとに5、6問ずつ例題が掲載されており、猟友会の会員からは「テキストをすべて読むのは分量が多いかもしれないが、問題集を1度解いておけば、知識試験は合格できる」とアドバイスを受けた。  仕事の合間を縫って、問題集を1度解ききり、一応、テキストもすべてに目を通して試験に臨んだ。最も厄介だったのが、記憶項目の多さ。現在、狩猟が認められる鳥獣は鳥類28種、獣類20種の計48種。同じカモ類でも獲ってよいものと禁止されているものがあるため、姿形や生態の特徴を覚えなくてはならない。また猟銃では、銃の種類と弾丸の大きさによって射程距離が変わるため、それも頭に入れなければならない。  試験は、知識試験と実技試験に分かれる。知識試験は30点満点で21点以上の得点で午後の実技試験に進める。知識試験は4種の共通問題が24問、猟法による個別問題が6問。3種類の試験に挑戦する記者は共通問題24問と個別問題18問受けることになる。試験時間は免許1種類で1時間、2種類だと1時間半、3種類だと2時間。何度も見直しを重ねたが約1時間もかからずに知識試験を終えた。  昼休憩のあと、知識試験の合格発表が行われ、合格者のみが午後からの実技試験に移る。  実技試験は主にイラストを見て、狩猟鳥獣か非狩猟鳥獣かを判断し、その名前を答える「鳥獣判別」と網やわなで禁止されているものかどうかを見分け、実際に仕掛けてみる「架設試験」、銃では取り扱い方法と試験官が指定するポイントまで何メートルか距離目測が試される。実技試験は減点方式で30点減点で不合格となる。  すべての試験が終わり、約1時間後、合格発表が行われた。午前9時から始まった試験は午後5時前にようやく終わった。  翌日から県行政情報センターで試験結果の情報開示を請求することができる。情報公開してみたところ、知識試験は3種目とも満点。実技試験は網が5点減点、わなが2点減点、銃は減点なしだった。  試験から約10日後、沿岸広域振興局保健福祉環境部から連絡があり、窓口で狩猟免状を手渡され、免許試験が終了した。釜石会場では延べ45人が受験し、43人が合格した。実技試験で不合格となった受験者はいなかったという。  免許を取得したからといって、実際に猟ができるわけではない。実際に猟をする都道府県に狩猟者の登録をする必要がある。その際にはハンター保険に加入し、狩猟税を納めなければならない。また、銃猟をするには、県公安委員会が行う「猟銃等講習会」を受けて試験に合格し、技能教習などを経て、銃の所持許可を得る必要があり、ハンターへの道はまだまだ険しい。 吉田かばん カバン ブランド 吉田カバン スーツケース ブランド クレドラン ブッテロ メンズ バッグ ブランド tough