もたつくファミマ、快走のセブン

 コンビニエンスストア大手3社の今期はスタートから早くも実力の差が現れている。セブン-イレブン・ジャパン、ローソン、ファミリーマートの3社とも積極的な出店計画を打ち出しているが、ファミリーマートの計画にはすでに黄信号が点る。一方、セブン-イレブンは消費税率引き上げ後の4月以降も既存店売上高が前年同月比で増えるなど、強さが目立つ。  第1四半期(3~5月期)の決算はセブン-イレブンが営業総収入で前年同期比10.6%増の1780億円、営業利益は同12.1%増の552億円。ローソンは営業総収入が同2.0%減の1171億円となったが、営業利益は同17.6%増の168億円(減価償却方法の変更による影響を除いた実質は3.3%増の147億円)。ファミリーマートは営業総収入が同7.7%増の886億円となったものの、営業利益は同11.3%減の90億円だった。 ■ 苦戦するファミリーマート  ファミリーマートは今2015年2月期に1600店という過去最高の出店計画を掲げてスタートした。しかし、売上高は増えたものの、出店費用を吸収しきれず、採算が悪化した。さらに、アイテム数を拡充するために、既存店へも大規模な投資を行ったことによる償却費増も響いた。  同社の経理財務本部長を務める小松崎行彦常務は「第1四半期の(営業利益)実績は、見込みより数億円下振れた」と着地は想定より厳しいものだったことを認めた。当然、コスト要因は予定されていたことであり、下振れたのは売上高のほう。「12年度あたりから積極出店を続け、年数の若い店が増えてきているが、こうした店の売り上げの伸びが想定よりも弱くなってきている」(小松崎常務)とした。出店数が急増するなかで、これまであまり進出してこなかった地方にも出店しており、そうしたところではブランドイメージの浸透度合いが低い。そのため、「今までの経験則どおりには売り上げが伸びず、時間がかかるようになっている」という。  実際、コンビニ他社のある幹部は「ファミマは本当に私達もびっくりするような(売り上げが出ないであろう)場所にも店を出してきている。店数を追うためにこんなところにまで出すのか、と思う店もある」と指摘する。ファミマは数年かけて売り上げが出るように育てる意向とする一方、出店場所の審査をより厳格にし始めているとも認め、ペースは鈍化気味だ。  ファミリーマートは昨年度、出店数、営業利益ともに前年度を上回ったものの、当初計画は下回って着地している(出店計画1500に対し1355店、営業利益計画451億円に対し433億円)。今年も同じ流れにならないか。7月には上海福喜食品の期限切れ鶏肉使用疑惑を受けて、一部商品が販売停止に追い込まれた。今年度も業績計画を達成できるかどうか、雲行きは怪しい。 ■ やはり強いセブン-イレブン  セブン-イレブンは業界首位の力を見せつけた。消費増税前の駆け込みに対する反動減が予想された4月以降も、大手3社の中で唯一、既存店の売上高が前年同月比プラスを維持している。セブン&アイ・ホールディングスの松本忍執行役員(IR担当)も「思った以上に利益を出せた」と自信をみせる。  他社との差は「これまでの事業基盤の差、基礎体力の差が出てきた結果」(松本執行役員)という。セブン-イレブンでは従来から、一つの地域に集中して店を出す「ドミナント戦略」を掲げ、効率良く商品を供給できる体制を築いてきた。業界2位のローソンより4割以上も多い国内店舗(7月末16764店)を持ちながら、いまだ進出していない県(青森、鳥取、高知)があるのはそういった背景による。  セブン-イレブンの今期出店計画はファミリーマートと同じ1600店でやはり過去最高。だが、出店ペースは順調だという。前出のコンビニ業界幹部は「セブンは皆が欲しがる場所に店を出してくる」と舌を巻く。ブランド力と圧倒的な売り上げの高さを武器に、利益を確保できる質の良い場所を抑えることができ、出店ペースを落とさない。  セブン-イレブンでは4月以降、プライベートブランド(PB)商品や弁当、おにぎりなどオリジナル商品のうちおよそ8割を順次リニューアルしてきた。「(売り上げが伸びているのは)セブンプレミアムなどのPB商品の存在も大きい」(松本氏)。  セブンプレミアムの売上高は発売を開始した07年以降、右肩上がりに伸びており、今年度はグループ全体で前年度比約2割増(8000億円)を見込み、15年度には1兆円に達する計画だ。昨年発売し大ヒット商品となった「金の食パン」など、品質の高さにより重点を置いたPB商品「セブンゴールド」にも力を注ぐ。 ■ ローソンは新社長の手腕と買収に注目  業界2位のローソンも今年は1100店と高水準の出店計画を掲げている。第1四半期は直営店の減少により営業総収入は前年同期比で減ったものの、チキンなど採算の良いファストフードが順調に伸びていることもあり、利益、店舗数ともに着実に積み上げた。  こうしたなか、12年間にわたってローソンを率いた新浪剛史氏から、玉塚元一氏へ社長交代が行われたのは今年5月のこと。玉塚新体制の実力が試されるのは第2四半期以降になりそうだ。  かつて大量出店によって多くの不採算店を抱えることになった苦い記憶を持つローソンは、「出店数を1000でいいと決めている」(新浪氏)。一定のシェアを確保するためにある程度の出店規模は保つとみられるものの、「差別化すれば売り上げは落ちない。店数ではなく、イノベーションに力を入れている」(同)。  今月6日には、複合型映画館を運営するユナイテッド・シネマの買収を発表し、エンターテインメント分野の強化を発表。さらに高級スーパー・成城石井の買収にも動いており、独自戦略を貫く姿勢は変わらないだろう。  トップのセブンと、2位以下のローソン、ファミマの間には、店舗数、一日の売上高ともにいまだ大きな差があるのが現状。今後もこの差を縮めるのは容易ではなく、むしろセブン-イレブンの独走が続きそうだ。 吉田かばん カバン ブランド 吉田カバン スーツケース ブランド クレドラン ブッテロ メンズ バッグ ブランド tough